2020年税制改正に関連する記事はこちらから
第1回「国外中古建物の不動産所得にかかる損益通算の特例について」
第2回「居住用賃貸建物の取得等に係る消費税の仕入税額控除制度等の適正化」
第3回「配偶者居住権」
第4回「NISA制度の見直し・延長」
第5回「低未利用地の活用促進」
第6回「未婚のひとり親に対する税制上の措置及び寡婦(夫)控除の見直し」
第7回「私的年金等に関する公平な税制のあり方」
第8回「所有者不明土地等に係る固定資産税の課題への対応」
第9回「税務手続きのデジタル化」
改正の概要
2020年度税制改正の最後は、国際的情報収集の拡大です。
改正を一言で言えば、「CRSに基づく非居住者の情報の交換が拡充された」ということです。
CRSに基づく非居住者金融講座情報の自動的情報交換による情報の拡充
各国の税務当局は、時刻に所在する金融機関から非居住者が保有する金融口座情報の報告を受け、租税条約等の情報交換規定に基づき、その非居住者の居住地国の税務当局に対し、その情報を自動的に提供する
【日本から外国への情報提供のイメージ】
CRS(Common Reporting Standard)とは、OECD(経済協力開発機構)が策定したもので、それぞれの国の金融機関に開設された相手国居住者の口座情報を自動的に交換する国際基準のことです。
加盟国同士の居住者の情報交換が可能で、それぞれの国の金融機関に開設された相手国の居住者の口座情報を知ることができます。
今までは、国外に5,000万円以上の資産を持つ人は「国外財産調書」の提出が義務付けられていました。
これは、海外の財産の残高を報告するものです。
2020年の税制改正において、さらに海外口座の預貯金の入出金や、不動産の賃貸借等の取引記録も保管することが義務付けられることになりました。
海外資産を把握することで、所得税の課税を強化したい考えです。
国税庁は、平成30年以後、毎年4月末までに国内に所在する金融機関から報告を受け、その年の9月末までに外国の税務当局に対し情報提供を行うとともに、外国の税務当局からその国の金融機関に日本の居住者が保有する金融口座に関する情報の提供を受ける
【外国から日本へ情報提供のイメージ】
CRS情報の活用イメージ
国税庁においては、受領したCRS情報を活用し、利子・配当等の申告漏れ、相続財産の申告漏れを把握します。それ以外にも、国外送金等調書、国外財産調書、財産債務調書等、すでに保有している様々な情報と併せて分析することにより海外取引・海外資産を的確に把握し、課税上の問題が認められる場合には確実に税務調査等を実施します。
・財産の記載漏れ
例えば、相続税の税務調査においては、死亡者情報等とCRS情報を突き合わせることによって、海外資産に係る申告漏れを発見する手立てになります。
また、国外財産調書の記載内容とCRS情報の海外口座残高を突き合わせた結果、金額に大きな差がある場合は、財産の記載漏れ等を発見する端緒となります。
CRS情報から海外口座残高が5,000万円超であると認められるにもかかわらず、国外財産調書が未提出である場合、未提出者に対して提出を求めることができます。
CRS情報は富裕層及び海外取引法人等の新規把握のほか、受領した情報そのものにより、その国と何らかの経済的関係を有していたことが把握できるなど、海外への資産隠し等の検討をする上で、有益な情報となります。
まとめ
国際的情報収集の拡大により、申告漏れを発見する手段になりえます。
特に富裕層の方は、国外財産調書の未提出に気をつけていただきたいと思います。
今回で「税制改正2020年」の記事は最終回になります。
2020年税制改正についてのバックナンバーはこちらからどうぞ。
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