いつか考えなければならないことの一つに相続にあります。
皆さんは相続について今どんなことを知っておきたいですか。
それは損をしないための知識ではないでしょうか。
そこで毎月第2第4木曜午後5時からは、沼津市大岡にありますイワサキ経営より、税理士の先生や現役バリバリの相談員の方とともに、相続について損をしないために知っておきたいことをパーソナリティーの神田あや乃さんと一緒にお伝えしていきます。
地域の皆様に愛されて45年、イワサキ経営グループの提供でお送りしますコーストFM「イワサキ経営相続相談室」第121回(2019年7月25日放送)は、前回の放送の直後に質問を頂いていました
「自筆証書遺言は、公正証書遺言書があることを知らずに相続人たちが相続してしまうことはあるのでしょうか。また後々出てきてしまったときはどうなるのでしょうか」
についてお伝えしていきます。
自筆証書遺言の存在を知らず、相続の手続きをした場合
確かになきにしもあらずです。
実際、前回、手書きの自筆証書遺言の話をしましたが、書いたけど家族に伝えてなかったとか、隠していた場合は、当然分からないですよね。
例えば公正証書であれば、公証役場というところで遺言の存在があるかどうかっていう確認が出来るのですが、手書きの場合は、誰かに伝えてなければ、それはもう全くわからないですね。
そのまま知らずに遺産分割をしてしまう、相続人で話し合って大事な財産を分けるということをやってしまわざるを得ないというか、そうなってしまうんですね。
もう一つの質問で、「遺産分割をしたがあとで遺言書が見つかった。きちんと整理をしたのに、あとで遺品を整理してたら遺品が見つかった」ということもよくあります。
僕だったら見なかったことにするかもしれないけど(笑)、法律上の話で言うと、原則は遺言が優先されるんです。
遺言っていうのは前回もちょっと話したかもしれないんですけれども、遺言を遺す人が、自分に万が一があった時に財産をどういうふうに分けるかっていうことで、遺産分割を指定するわけなんですね。
亡くなった時点でその遺言っていうのは公的な効力を生じるので、亡くなった時点で遺言書どおりに財産の引き継ぎが行われるべきなんです。
それを知らずに、話し合って決めた後に遺言書が見つかった場合、原則はやっぱりその遺言書が優先されるので、遺産分割が無効になるっていうのが本来であるんですけれども、ただ、利害関係者の合意のもとで遺産分割で処理をするというケースもあるかと思います。しかし、一人でも反対があれば、遺言書が優先となります。
原則は遺言書が優先されるということになります。
せっかく遺言を作っても相続人に伝えておかないと、最後まで遺言書が発見されなかったりするので、遺言書の存在をきちんと伝えておくのが重要です。伝えないと意味がなくなります。
相続法改正:配偶者居住権について
今回は、3回シリーズで相続法をお伝えする、その2になります。
前回は、遺言書の改正をテーマにお話しましたが、今回の改正でもう一つ結構注目されているのが、「配偶者の居住権」です。
世の中かなりの高齢化社会になってまして、亡くなられる方も平均寿命が男性も80歳、女性も90歳近くになるわけですが、そういった中で亡くなった方と一緒に共に生活し、遺された配偶者の方を保護する法律が新たに作られたので、そのあたりの説明をします。
旦那さんが先に亡くなったケースを例にお話します。
土地や建物について、奥さんと共有名義というものもありますが、それでもやっぱり男性の名義というのがどちらかというと多かったりします。
旦那さんが建物を建てて、その後、旦那さんが亡くなり、奥さんが旦那さんの名義を自分が引き継いで、そのまま引き続き生活するというのが当然考えることですよね。
でもね、中にはさみしい話もあります。
相続において、実の子供さんとなればそんなにこういうケースではないのかなと思うんですけども、例えば旦那さんが亡くなったら相続人は旦那さんの奥さんと子供さんとなりますが、要はその旦那さんの自宅の名義は、原則は、財産分け、子供と相続人で相続人が話し合いをしないといけないというのが現状なのですが、そうなったときに、例えば子供さんがすごいお母さんと仲が悪くて、俺も住む家をもらう権利があるんだからとか、そんなことを言う人はとんでもないなぁと思ったりしますけれども。
でも中には、実の子はいなくても、例えば旦那さんが以前結婚していて、前妻との間にお子さんがいたりする場合、遺された奥さんは、遺言書とかなければ、その前妻の子供たちと財産分けについて話し合いをしないといけないわけです。
そこで前の奥さんとの間とのお子さんが、今の奥さんに対して快く、いや私はいいですからと言ってくれればいいですけれども、いや自分も子供だから財産欲しいよと言ったとします。
そうなると、奥さんはそのまま財産を引き継いで生活できるかというと、わからなくなりますよね。
そういったこともあって、今回、新たに配偶者がその家に住み続けることができる配偶者居住権という権利をつくりました。
配偶者居住権は自然には発生しない
民法というのは、居住権が認められるための要件があります。
それはしっかり覚えておいていただけると良いと思います。
配偶者居住権で奥さんが守られるためにはどうしたらいいのか。
そのための要件は、不動産をお持ちだったご主人が生前に遺言で配偶者居住権ということをあげるよ、生前の場合は、遺言で配偶者居住権を配偶者の方にあげるよと記載をすること。
もしくは、亡くなってしまった後ですけれども、遺された相続人さん、今回の例ですと奥さんと息子さんと「遺産分割協議」という話し合いで配偶者居住権をお母さんにあげるよという合意が必要です。
自然に配偶者居住権っていうのが確保できるわけではないんです。遺言が大事なんですね。
遺言書は、やはり私たちは、公正証書遺言をお勧めします。
公正証書遺言で、きちんと旦那さんが配偶者居住権っていうものを愛する妻に相続させますっていう形で、きちんと遺しておく。
遺言書がない場合は、遺された人で話し合って、配偶者居住権っていうのを奥さんが相続する合意が必要になります。
勘違いされる方が多いのですが、配偶者であれば居住権っていうのが自動で発生するっていうふうに思っている方もいらっしゃいます。
しかし、今回の法律は、配偶者の方が、今後の生活を考えて住み続けることができるような権利を作りましょうという形で新設されたものなので、それを活用するには、遺言もしくは遺産分割で配偶者居住権っていうのをきちんと奥さんが相続する形にしないと駄目っていうことなんです。
その遺言にこの一文があるだけで奥様の生活が守られるという事ですよね。
配偶者の短期居住権
もう一つ、この配偶者の居住を保護する政策として、配偶者の短期居住権というのがあります。
先ほどの配偶者居住権は、将来居住する権利について、一生涯とか奥さんが無くなるまでとか、年数も設定することができます。
一方、今からお話する配偶者短期居住権は、遺産分割で居住権を奥さんが相続することを合意する必要はありません。
また、遺言書で配偶者居住権を愛する妻に相続させますというのがなかったとしても、配偶者の方であれば必ず短期居住権が保護される形になります。
では、その期間がどれくらいなのかというと、原則6か月。
6か月間は、一緒に住んでた奥さんは、他の人の利害関係者の合意もなく、そのままその家に住み続けることができます。
ただ、6ヶ月過ぎちゃうと、例えば意地の悪い子どもから、お母さん出て行けよここは俺の家なんだから!と言われるんですね。
自動的に短期居住権ということで、少なくとも6カ月、厳密に言うとね例えばその1月1日に亡くなったとすると、そうすると6ヵ月後ですから7/1までですね。
その間に財産分けがまとまらなかったら、7月を過ぎて8月に財産分けがまとまったとなると、6カ月よりも遺産分割がまとまったのが後だったら、その分割がまとまった時までOKとなります。
例えば、1月に亡くなって3カ月後の3月に財産分けがまとまったとしましょう。
子どもがその家を引き継ぐようになったとなったとしても、奥さんは6ヶ月まで、7月1日まではそこに住み続けることができます。
配偶者居住権は、今までそういった法律がなかったことを考えると、少しはよくなったんですよね。
遺言があって亡くなった旦那さんに遺言があって、その亡くなった旦那さんが愛人に全部あげるよというパターンで例を出すケースはありますが、愛人に全部財産を渡したら、正妻は住めなくなっちゃいますよね。
今回の改正は、お母さん出てけと言われても、最長6ヶ月間は配偶者は住むことができるので、その間に対策を考えましょうと配偶者が守られているということなんですね。
こういった法律は今までなかったけど今回の法改正でこういったことができるようになりました。配偶者の権利をさらに強くさせていこうとする流れになっています。自筆証書遺言もそうですし、配偶者居住権もそうですけれども、配偶者のほうがだんだん強くなっていってるという歴史もありますね。
そうですね。
配偶者居住権に関する皆さんの関心が非常に高く、今回、ここは大きな改正の目玉かと思います。
居住用不動産の贈与に関する特例
もう一つ税務的な部分で、婚姻期間によって優遇措置があったものがあります。
婚姻期間によって使える特例というもので贈与の特例になるんですけども、婚姻期間が20年以上、20年長く連れ添った夫婦の間で使える贈与の特例になります。
居住用不動産に関して、自宅、その居住用不動産を取得するための金銭、その家を買うためのお金とかに行われる贈与について、最高で2,110万円までは贈与税をかけずに奥様とか旦那様とかに渡すことができる特例があります。
実際、この特例を使うとみんなが得をするかと言うと、そうでもないケースもあります。
この特例を生前から使った方が有利になるケースもあれば、以前もお話ししたように不動産取得税もかかってきたりするため、あまり先に移すよりも相続まで待ってた方が有利というケースもありますので、なんとも難しいところではあります。
これはもともと、贈与税の配偶者控除といって婚姻期間が20年以上連れ添った夫婦間で、自宅の2,110万円までは奥さんに。逆もいいんですけれども税務的に前からあったんですね。
ただ、財産分けの考え方で言うと、生前に奥さんに自宅の名義を、例えば自宅の価値として2,000万のものを奥さんに移します。当然、税金的がかからず移すことができるんです。
ただ、実際、将来相続が発生したときに、財産は残された財産の分割というところで考えると、結構大きな2,000万というお金を奥さんに移していくので、財産分けの話し合いにおいては、原則生前の財産の前渡しっていう考えになるので、それが持ち戻して計算される対象になってしまうんです。
でも、今回の改正で、生前にこういった形で配偶者に渡したとしても、あげた財産を将来持ち戻さなくても良いことになったんです。
もともと、税務上では持ち戻す必要はなかったんです。
相続って、税の考え方と民法の考え方が違ってややこしいのですが、税務上も、もともとあげた配偶者控除を使って渡したものは税務上も持ち戻す必要はなかったんです。しかし、民法上は渡さなければならなかった。
税務上は持ち戻して計算する必要はなかったんですけれども、今まで民法上は持ち戻して財産分けの対象になってたんですよ。
それを、民法上も税務上と同じように持ち戻して財産分けの対象にしなくてもいいですよと今回なりました。
長年連れ添った奥さんに感謝の意味をこめて、全部でなくても半分でも奥さんに名義を変えるのは良いことだと思います。
なかなか難しい話ですが、相続って民法の考えと税務の考えと両方理解しないとすごく難しいんです。
今回の持ち戻さなくていいって改正になったのは、ある種、税務のほうが進んでたという感じで、それに合わせて民法が改正されたという、配偶者がより保護される非常によい改正です。
そういう方もやっぱり中にいらっしゃいますよ。
何でもそうですけど、税法も、タイミングによって、税法が変わるタイミングです。今回の配偶者居住権については2020年4月1日から試行されます。
ところで、先週の遺言書が法務局で保管されるのも、2020年7月10日から施行です。まだ施行されていませんので、お気をつけください!
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