2020年12月21日、令和3年度の税制改正の大綱が閣議決定されました。
概要は以下の通りになります。
ポストコロナに向けた経済構造の転換・好循環の実現を図るため、企業のデジタルトランスフォーメーション及びカーボンニュートラルに向けた投資を促進する措置を創設するとともに、こうした投資等を行う企業に対する繰越欠損金の控除上限の特例を設ける。また、中小企業の経営資源の集約化による事業再構築等を促す措置を創設する。加えて、家計の暮らしと民需を下支えするため、固定資産税の評価替えへの対応、住宅ローン控除の特例の延長等を行う。具体的には、次のとおり税制改正を行うものとする。
令和3年度の税制改正の大綱は8つから成っています。
- 個人所得課税
- 資産課税
- 法人課税
- 消費課税
- 国際課税
- 東日本大震災からの復興支援のための税制
- 納税環境整備
- 関税
この改正法案は、衆参両院委員会と本会議での審議を経て、順調にいけば4月1日に施行されます。
令和3年度税制改正「2.資産課税」の概要
令和3年度の税制改正で、資産課税については以下の4項目があります。
- 国際金融都市に向けた税制上の措置
- 住宅取得等資金に係る贈与税の非課税措置の拡充
- 教育資金、結婚・子育て資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置の見直し
- 土地に係る固定資産税等の負担調整措置
今回から4回にわたって、4項目それぞれの解説をしていきます。
1.国際金融都市に向けた税制上の措置
まず、国際金融都市に向けた税制上の措置として、高度外国人材等の日本での就労を促進する観点から、就労等のために日本に居住する外国人が死亡した際、その居住期間にかかわらず、外国に居住する家族等が相続により取得する国外財産を相続税の課税対象としないこととしています。
国内に短期的に居住する在留資格を有する者、国外に居住する外国人等が、相続開始の時又は贈与の時において国内に居住する在留資格を有する者から、相続若しくは遺贈又は贈与により取得する国外財産については、相続税又は贈与税を課さないこととする。
(注)上記の「在留資格」とは、出入国管理及び難民認定法別表第一の上欄の在留資格をいう。
改正の背景
日本の相続税の税率は最高55%で、他の諸外国に比べて高いとされています。この高い税金のために、日本での就労を避ける外国人は少なくないと言われています。
現行は、就労等のために日本に居住する外国人が亡くなった場合、過去15年間における滞在期間が合計10年以下の場合は、日本国内にある財産のみが日本の相続税・贈与税の課税対象となります。
しかし、滞在期間が10年以上になると、海外にある財産も日本の相続税・贈与税の対象となり課税されています。
今回の改正で、高度外国人材の就労を促進する観点から、在留資格のある外国人の相続税や贈与税について見直されることになりました。
改正の概要
改正前は、過去15年間における滞在期間が合計10年以下の場合、日本国内の財産のみが課税対象になっていました。
改正後は、滞在期間の長さに関わらず、国内財産だけが相続税・贈与税の課税対象になります。つまり、国外財産については、課税対象から除外されることになり、これは、贈与税についても同様としています。
日本に滞在中に死亡した外国人(被相続人)の滞在期間 | 相続人が外国に居住(例:本国に住む家族) | 相続人が日本に居住(相続開始前15年中10年以下) | |
現行 | 10年以下 | 日本国内の財産にのみ課税 | |
10年超 | 日本国内及び国外の財産に課税 | ||
見直し案 | 入管法別表第一の在留資格で居住(居住期間を問わない) | 日本国内の財産にのみ課税(国外財産に課税しない) |
「相続開始の時または贈与のときにおいて、国内に居住する在留資格を有するもの」から、「国内に短期的に居住する在留資格を有する者」や「国外に居住する外国人等」への相続・遺贈・贈与については、居住期間の長さにかかわらず、国外財産に対する相続税または贈与税が課税されなくなります。
なお、この「在留資格」とは、主に外国の大使や各分野の高度人材、プロの芸術家やスポーツ選手などが該当します。出入国管理及び難民認定法別表第一の在留資格(外交、高度専門職、医療、研究、企業内転勤、興行など)をいい、同法別表第二の在留資格(永住者、日本人の配偶者等、永住者の配偶者等、定住者)は含まれないことに注意が必要です。
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