年末調整

令和3年度年末調整について【昨年度からの変更点】

早いもので、今年も残すところわずかとなりました。
今年も年末調整の季節が近づいてきましたので、今回は変更点を中心に令和3年度の年末調整について解説していきます。

年末調整の対象となる人

まず年末調整の対象となる人は、以下になります。

年末調整の対象者
  • 1年と通じて勤務している人
  • 年の中途で就職し、年末まで勤務している人
  • 年の中途で退職した人のうち、次の人
    1. 死亡により退職した人
    2. 著しい心身の障害のため退職した人で、その退職時期からみて本年中に再就職ができないと見込まれる人
    3. 12月中に支給期の到来する給与の支払いを受けた後に退職した人
    4. いわゆるパートタイマーとして働いている人などが退職した場合で、本年中に支払いを受ける給与の総額が103万円以下である人
    5. 年の中途で、海外の支店へ転勤したことなどの理由により、非移住者となった人

令和3年度年末調整の変更点

令和3年度の年末調整の変更点は、大きく分けて3つあります。

  1. 年末調整書類に押印不要(税務関係書類の押印義務の見直し)
  2. 年末調整を電子化するための事前申請の廃止
  3. 住宅ローン控除特例の見直し

また、補足情報として以下の2つについても追記していますので、ぜひ最後までお読みください。

  • ひとり親控除・寡婦控除の改正
  • 退職所得課税の見直し

1、年末調整書類に押印不要(税務関係書類の押印義務の見直し)

令和3年度から、年末調整書類に押印の必要がなくなりました。
今まで名前の横に押印が必要だったのですが、国税庁は廃止するとしました。
「給与所得者の保険料控除申告書」にも、押印の必要がなくなりました。

1 税務関係書類における押印義務の改正

税務署長等に提出する源泉所得税関係書類について、押印を要しないこととされました。
このため、扶養控除等申告書などの年末調整の際に使用する書類についても、従業員等に押印をしていただく必要はありません。令和3年分年末調整のしかたより

2、年末調整を電子化するための事前申請の廃止

令和3年3月までは、従業員の方がパソコンなどを使用してデータで勤務先に提出する際に、事前に税務署長の承認を受けることが必要でした。令和3年4月からは、その税務署長への承認が不要となっています。

承認が不要となる書類は以下になります。

  • 給与所得者の扶養控除等申告書
  • 従たる給与についての扶養控除等申告書
  • 給与所得者の配偶者控除等申告書
  • 給与所得者の基礎控除申告書
  • 給与所得者の保険料控除申告書
  • 給与所得者の住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除申告書
  • 所得金額調整控除申告書
  • 退職所得の受給に関する申告書
  • 公的年金等の受給者の扶養親族等申告書

従業員の方は、国税庁が無償で提供している年末調整控除申告書作成用ソフトウェア(年調ソフト)で、勤務先に提出することができます。

こちらの記事にも、年調ソフトについて書いていますので、参考にしてください→
年末調整の簡便化について〜年末調整手続きがスマホやPCでできるようになります!

「年調ソフト」は、質問に答えていくだけなので、簡単に申告書を作成することができます。登録はパソコンから登録する方法とスマートフォンから登録する方法があります。

パソコンから登録

パソコンから登録する場合は、WindowsかMacで「年末調整 国税庁」と検索してソフトをダウンロードしてください。こちらからダウンロード可能です。

年調ソフトパソコンから登録

スマートフォンから登録

スマートフォンから登録する場合は、Android端末かiPhoneのQRコードを読み込んでダウンロードしてください。

年調ソフトスマートフォンから登録

年末調整を会社側でデータで受け取ると、給与システムに取り込むことができ、自動計算でチェックすることが可能です。
7年間の保管義務も紙(書類)ではないので、場所を取られずにsなどメリットがあります。

3、住宅ローン控除特例の見直し

住宅ローン控除は、住宅ローンを利用して住宅を購入したりリフォームをおこなうと減税になる制度です。

令和元年まではこの控除期間が10年でしたが、令和元年の10月の消費税増税の緩和対策として控除期間が10年から13年に延長する特例が定められました。

この13年間適用が、令和3年度末までが「入居の条件」でしたが、令和4年末まで延長されます。

住宅ローン控除の特例の適用条件

住宅ローン控除の特例を受けるためには、以下の条件が必要になっています。
令和3年度は、所得金額が1,000万円以下の方について、住宅面積の合計が40㎡に緩和されました。

  • 新築の取得日から6ヶ月以内に居住の用に供し、適用を受ける各年の12月31日まで引き続いて住んでいること
  • 住宅の面積が50㎡以上で、床面積の1/2以上の部分が自己の居住用であること
  • この特別控除を受ける年の所得の合計が3,000万円以下であること
    ※所得の合計が1,000万円以下の場合は、住宅面積が40㎡以上50㎡未満も認められる
  • 新築については、令和3年9末まで、分譲住宅については令和3年11月末までに住宅の取得に係る契約を締結していること

住宅ローン控除の計算方法

住宅ローン控除の計算方法は以下の通りになっています。

居住の用に供した年 控除期間 各年の控除額の計算
令和3年1月1日〜
令和4年12月31日
1年目〜
10年目
年末残高×1%
11年目~
13年目
次のいずれか少ない控除限度額
①年末残高等(上限5,000万円)×1%
②(住宅取得等対価の額ー消費税額)(上限5,000万円)×2%÷3

出典:国税庁 認定住宅の新築等をした場合(住宅借入金等特別控除)

注意点としては、はじめて住宅ローン控除を受けるのが令和3年度になる従業員の方については、確定申告になります。
年末調整担当者の方は、2年目以降の従業員の方が年末調整の対象になることに留意してください。

【追加情報1】ひとり親控除・寡婦控除の改正(昨年から引き続き適用)

令和2年から、既婚歴に関係なく所得控除が受けられる「ひとり親控除」が創設されました。ひとり親・寡婦控除について、年末調整でも精算していく必要があります。

ひとり親の対象者について、以下のように定められています。

  • その人と事実上婚姻関係と同様の事情にあると認められる一定の人がいないこと
  • 生計を一にする子がいること
  • 合計所得金額が500万円以下であること

国税庁 ひとり親控除について

控除額は35万円となっており、未婚のシングルマザー、シングルファーザーも対象になります。
また、年末調整がおこなわれる年の12月31日の時点での婚姻状況なので、年の途中で離婚した場合は控除の対象となります。

【追加情報2】退職所得課税の見直し(令和4年度から適用)

勤続年数が5年以下の従業員の退職金が300万円を超える際に、超えた部分の計算の見直しがあります。

今まで従業員が退職したときには、次の計算式で所得金額を計算しています。

退職所得金額=(退職金額ー退職所得控除額)×1/2

令和4年分以後の所得税から、勤続5年以下の退職金について300万円を超える1/2課税が不要になります。

・退職所得控除額の控除後の残額が300万円以下の場合(退職金額ー退職所得控除額) ≤300万円の場合

退職所得金額=(退職金額ー退職所得控除額)× 1/2

・退職所得控除額の控除後の残額が300万円超の場合(退職金額ー退職所得控除額)>300万円の場合

退職所得金額=150万円 +(退職金額ー(300万円+退職所得控除額))

国税庁は、退職所得課税の見直しについて「税負担の平準化を図るため」としています。この退職所得税の見直しについては、令和4年分以降の所得税に適用されますので、勤務期間が5年以内で退職金が300万円以上の場合は留意していってください。

まとめ

今後、年末調整はますます電子化が進んでいくと考えられます。
従業員の方には年調ソフトやマイナンバーカードとの連携を推進し、会社の給与計算ソフトで計算やデータの管理を簡素化できるようになるといいですね。

 

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