相続対策について

「小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例に係る 相続税の申告書の記載例等について」の解説【その2】

前回に引き続き、令和3年4月1日に国税庁が公表した「小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例に係る 相続税の申告書の記載例等について」についての続きです。

前回の「小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例に係る 相続税の申告書の記載例等について」の解説【その1】はこちらからどうぞ

事例は全部で15ケース:「小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例に係る相続税の申告書の記載例等について」

国税庁のホームページ「小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例に係る相続税の申告書の記載例等について」には、全部で15ケース掲載されています。
今回は、【事例4】【事例5】【事例6】について、問い、答え、記載例を詳しくみていきます。

  • 【事例1】複数の利用区分が存する場合
  • 【事例2】被相続人の共有する土地が被相続人等の居住の用と貸付事業の用に供されていた場合
  • 【事例3】特定同族会社事業用宅地等と貸付事業用宅地等が混在する場合
  • 【事例4】マンションの区分所有権の数戸を取得した場合
  • 【事例5】共有宅地についての小規模宅地等の特例の選択
  • 【事例6】共同住宅の一部が空室となっていた場合
  • 【事例7】申告期限までに宅地等の一部の譲渡があった場合
  • 【事例8】被相続人等の居住用宅地等を共有で取得し、その1人に小規模宅地等の特例の適用がある場合
  • 【事例9】店舗兼住宅の敷地の持分の贈与について贈与税の配偶者控除の適用を受けていた場合
  • 【事例10】相続開始前3年以内に新たに事業の用に供された宅地等で、事業の用以外の用に供されていた部分がある場合
  • 【事例11】配偶者居住権① (相続人が土地を共有で取得した場合)
  • 【事例12】配偶者居住権② (店舗併用住宅の場合)
  • 【事例13】配偶者居住権③ (賃貸併用住宅の場合)
  • 【事例14】配偶者居住権④ (賃貸併用住宅(空室あり)の場合)
  • 【事例15】配偶者居住権⑤ (申告期限までに宅地等の一部の譲渡があった場合)

 

事例4:マンションの区分所有権の数戸を取得した場合

被相続人甲は、一棟の建物に構造上区分された数戸の部分で独立して住居、店舗、事務所又は倉庫その他建物としての用途に供することができるもの(いわゆるマンション)について全40戸のうち3戸を有していた。
なお、その敷地利用権(所有権)は、マンションの敷地(1,000平方メートル)に対してそれぞれ40分の1となっている。
甲は3戸のうち1戸を甲とその配偶者乙及び子丙の居住の用に、残り2戸を甲の貸付事業の用に供していた。
乙は、甲が所有していた3戸のうち居住の用に供していた1戸を相続により取得し、申告期限まで引き続き自己の居住の用に供している。丙は、残り2戸を相続により取得し、申告期限まで引き続き貸付事業の用に供している。
相続税の申告に当たり、乙は相続により取得した1戸に対応する敷地について特定居住用宅地等として選択し(特定居住用宅地等の要件は満たしている。)、丙は相続により取得した2戸に対応する敷地について貸付事業用宅地等として選択し(貸付事業用宅地等の要件は満たしている。)小規模宅地等の特例の適用を受ける。
この場合の相続税の申告書第11・11の2表の付表2の1(小規模宅地等についての課税価格の計算明細(その1))、第11・11の2表の付表2の2(小規模宅地等についての課税価格の計算明細(その2))及び第11・11の2表の付表2の3(小規模宅地等についての課税価格の計算明細(その3))の記載はどのようにすればよいか。

甲と乙の居住の用に供されていた部分に相当する宅地等の相続税評価額 20,000,000円
甲の貸付事業の用に供されていた部分に相当する宅地等の相続税評価額 15,800,000円

※ 上記各相続税評価額は、1戸分に対応する部分のものである。

ポイント

・甲・・・相続人(例:お父さん)が建物1棟全40戸のうち、3戸を所有していた。内訳は、居住用1戸(配偶者乙と子丙の居住用)、貸付事業用2戸

・乙・・・配偶者は居住用1戸を相続により取得(特定居住用宅地として選択)

・丙・・・子は事業用2戸を相続により取得(貸付事業用宅地等として選択)

・相続税の申告書の記載はどのようにすればよいか

答えのポイント

・相続税の申告書第11・11の2表の付表2の1と、第11・11の2表の付表2の2の記載は次のとおり

・相続税の申告書第11・11の2表の付表2の3(小規模宅地等についての課税価格の計算明細(その3))は、次の①②に該当する場合に作成されるので、今回は作成しない

①相続又は遺贈により一の宅地等を2以上の相続人又は受遺者が取得している場合
②一の宅地等の全部又は一部が、貸家建付地である場合において、貸家建付地の評価額の計算上「賃貸割合」が「1」でない場合

【申告書の記載例】

記載例

事例の答えの詳細については、国税庁ホームページ内“事例4:マンションの区分所有権の数戸を取得した場合”も参照ください。

事例5:共有宅地についての小規模宅地等の特例の選択

下図のような被相続人甲の居住の用に供されていた家屋の敷地について、特定居住用宅地等(配偶者乙、子丙が各々2分の1を相続により取得し、ともに特定居住用宅地等の要件は満たしている。)として選択し、小規模宅地等の特例の適用を受ける場合の相続税の申告書第 11・11の2表の付表1(小規模宅地等についての課税価格の計算明細書)及び第 11・11 の2表の付表1(別表1)(小規模宅地等についての課税価格の計算明細書(別表1))の記載はどのようにすればよいか。

ポイント

・甲・・・被相続人(例:お父さん)は乙(配偶者)と丙(子)と居住していた
敷地(300m2・・・甲2/3、乙1/3を所有)

・相続により特定居住用宅地等を選択し内訳は次のとおり
敷地(300m2・・・乙1/2、丙1/2)

・小規模宅地等の特例の適用を受ける場合の申告書の記載方法はどのようになるか

事例5

【土地300m2の相続税評価額】
60,000,000円

答えのポイント

・相続税の申告書11・11の2表の付表2の1、相続税の申告書11・11の2表の付表2の2、相続税の申告書11・11の2表の付表2の3の記載は次のとおり

・甲の持分すべてを乙または丙が単独で相続又は遺贈により取得した場合は、相続税の申告書11・11の2表の付表2の3の作成は要しない

【申告書の記載例】
記載例
記載例

事例の答えの詳細については、国税庁ホームページ内“事例5:共有宅地についての小規模宅地等の特例の選択”も参照ください。

事例6:共同住宅の一部が空室となっていた場合

被相続人甲は、自己の所有する土地(200 ㎡)の上にアパート1棟(10 室)を所有し、これを貸付事業の用に供していたが、相続開始の1か月前にこのアパートの1室が空室となり、相続開始の直前においては9室を貸し付けていた(この空室については、甲の大学生の子丙を住まわせるため新規の入居者の募集を中止していた。)。
上記アパートとその敷地(200 ㎡)については、甲の配偶者乙が相続により取得し、9室の貸付事業について乙が引き継ぎ、申告期限まで引き続き貸付事業を行っている。
乙が貸付事業を引き継いだ部分について、貸付事業用宅地等(貸付事業用宅地等の要件は満たしている。)として選択して小規模宅地等の特例の適用を受ける場合の相続税の申告書第 11・11 の2表の付表1(小規模宅地等についての課税価格の計算明細書)及び第11・11の2表の付表1(別表1)(小規模宅地等についての課税価格の計算明細書(別表1))の記載はどのようにすればよいか。
なお、甲は、相続開始前3年を超えた日以前から、上記建物において貸付事業を営んでいた。
路線価 1㎡ 200,000 円、借地権割合 70%、借家割合 30%

ポイント

・甲・・・被相続人(例:お父さん)は所有する土地(200m2)にアパート1棟(10室)を所有していた

・乙(配偶者)が相続により9室の貸付事業を引き継いだ

・10室のうち1室は、丙(子)が住む予定で新規の募集を中止していた

・小規模宅地等の特例を受ける場合の申告書11・112表の付表1及び第11・11の2表の付表1(別表1)の記載はどのようにすればいいか

【土地の評価額 貸家建付地の評価額】
@200,000 円×200 ㎡ = 40,000,000 円
40,000,000 円×(1-0.7×0.3×(180 ㎡/200 ㎡))= 32,440,000 円

【貸付事業用宅地等について減額される金額】
①空室に対応する敷地部分の評価額
@200,000 円 × 20 ㎡ = 4,000,000 円

②賃貸中の部屋に対応する敷地部分の評価額
@200,000 円 × 180 ㎡ = 36,000,000 円

③小規模宅地等について減額される金額及び課税価格に算入される金額
28,440,000 円 ×50%=14,220,000 円・・減額される金額
28,440,000 円 - 14,220,000 円 = 14,220,000 円
4,000,000 円 + 14,220,000 円
= 18,220,000 円・・課税価格に算入される金額

答えのポイント

被相続人又は被相続人と生計を一にしていたその被相続人の親族(以下「被相続人等」という。)の事業の用に供されていた宅地等とは、相続開始の直前において、被相続人等の事業の用に供されていた宅地等で、その宅地等のうちに被相続人等の事業の用に供されていた宅地等以外の用に供されていた部分があるときは、その被相続人等の事業の用に供されていた部分に限られる(措令 40 の2④)

・空室の1室が相続開始時において、継続的に貸付事業の用に供していたものとして取り扱うかどうかがポイント

・このケースでは、空室部分は丙に貸し出す予定で募集をしていなかったので、空室に対応する敷地部分は貸付事業の用に供していないと判断された

・逆に空室になった直後から新規の募集をしているなど、いつでも入居可能な状態な場合は、空室部分も含めて、アパートの敷地全部が貸付事業用の宅地等に該当することとなる

【申告書の記載例】
記載例
記載例

事例の答えの詳細については、国税庁ホームページ内“事例6:共同住宅の一部が空室となっていた場合”も参照ください。

小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例に係る 相続税の申告書の記載例等について【その3】に続きます!
相続に関して詳しいことは、一度お問い合わせ下さい。ご相談は無料です!

ABOUT ME
税理士法人イワサキ
当税理士法人では20年以上前から相続専門の部署を設け、これまでに相続手続きから相続税申告、また、遺言や贈与等の生前対策でもたくさんのお客様をサポートしてきました。 当法人の最大の特徴は、相続の総合病院であるということです。健康診断の代わりに事前調査を行い、病院の先生の代わりに専門家が対処いたします。 「相続ってなにをするの?どこに問い合わせればよいの?」 「相続で将来もめたくないけど…」 という方は、ぜひお問い合わせください。 また、相続に関するセミナーも、静岡市と沼津市で毎月開催しています。直接のご相談はちょっと…というようでしたら、まずはセミナーに参加して、情報収集してみませんか。
相続税サービスメニュー


税理士法人イワサキの相続税サービスメニューは、こちらからご確認いただけます。

初回の相談料は無料にて承っておりますので、いつでも遠慮なくお問い合わせください。

相続税サービスメニューへ


相続の準備をしている方へ

相続対策は、実際の相続の現場を多く経験した者しかわからないことがたくさんあります。

イワサキでは公平・中立な立場でお客様の視点に立って、相続税対策や土地の有効活用を分析・提案しております。

相続対策サービスメニューへ


相続セミナー情報

税理士法人イワサキでは、毎月静岡市と沼津市で、相続に関するセミナーを開催しています。

直接のご相談はちょっと…というようでしたら、まずはセミナーに参加して、情報収集してみませんか。

セミナー情報一覧へ