祖父母や親が子や孫に贈与する際、節税と家族支援の両立を可能にする制度として注目されているのが「結婚・子育て資金の一括贈与に係る贈与税の非課税制度」です。2025年の税制改正により、この制度の適用期限が2年間延長されることとなりました。
本記事では、最新の制度概要や非課税の条件、信託契約の要件、注意点などを詳しくご紹介します。
結婚・子育て資金の一括贈与制度とは?
この制度は、18歳以上50歳未満の子や孫(=受贈者)が、父母や祖父母(=贈与者)から結婚・子育てにかかる費用のために一括して金銭の贈与を受けた場合、一定の手続きを行えば、最大で1,000万円までの贈与について贈与税が非課税となる仕組みです。
非課税の対象となる具体的な支出は以下のとおりです。
■結婚関連(上限300万円)
- 挙式費用や披露宴費用
- 衣装代、引っ越し費用、新居の敷金・礼金など
■子育て関連
- 不妊治療費や妊婦健診費
- 出産費用、産後ケア
- 保育料やベビーシッター代
- 子どもの医療費 など
これらの支出に対し、領収書等の証拠書類を提出する必要があります。
金融機関で行う手続き等について
この非課税制度を使うには、単に現金を渡すだけでは足りません。
以下のいずれかの方法で、金融機関等との契約・手続きを行う必要があります。
- 信託銀行との信託契約に基づき、信託受益権を受贈する
- 銀行等に贈与を受けた金銭を預け入れる
- 証券会社で贈与を受けた金銭により有価証券を購入する
この非課税制度の適用を受けるためには、結婚・子育て資金口座の開設等を行った上で、結婚・子育て資金非課税申告書を口座の開設等を行った金融機関等の営業所等に、信託や預入などをする日までに提出等をしなければなりません。
また、結婚・子育て資金口座からの払出し及び結婚・子育て資金の支払を行った場合には、領収書などの書類を、所定の提出期限までに金融機関等の営業所等に提出する必要があります。
受贈者が50歳に達するか、口座の残高がゼロになる、受贈者死亡等の事由に該当したとき終了します。
所得に関する要件について
この制度には所得制限があります。
贈与を受けた年の前年分の所得税に係る合計所得金額が1,000万円を超える受贈者は、制度の適用を受けることができません。
「合計所得金額」とは、給与所得・事業所得・不動産所得・配当所得などすべてを合算した金額を指します。
残金には課税リスクあり!契約終了時と贈与者死亡時の取扱い
この制度は「一括で贈与した金額がずっと非課税」というわけではなく、以下のような場合には課税対象となります。
① 受贈者が50歳に達して契約が終了したとき
使い切れていない金額があれば、その残額が贈与税の課税対象となります。
② 贈与者が死亡したとき
未使用の残額(管理残額)は、受贈者が相続によって取得したものとみなされ、相続税の課税対象になります。
相続税の課税価格の計算に当たっては、管理残額を含めて課税価格の計算をする必要があります。その結果、それぞれの課税価格の合計額が基礎控除額を超える場合には、相続税の申告期限までに相続税の申告を行う必要があります。
特に受贈者が贈与者の子以外(孫など)である場合、管理残額に「相続税額の2割加算」の対象となるケースもあるため、注意が必要です。
令和9年3月末までに延長!
今回の税制改正により、適用期限は2027年(令和9年)3月31日までに延長されました。それまでに信託契約や贈与手続きが完了していれば、非課税制度を活用できます。
ただし、今後の税制見直しで内容が変わる可能性もあるため、早めの活用をおすすめします。
まとめ
「結婚・子育て資金の一括贈与の非課税制度」は、少子化対策や次世代支援を目的に設けられた制度であり、祖父母世代の資産を有効に活用するための手段として注目されています。
ポイントは以下の通りです。
- 最大1,000万円(結婚資金は300万円まで)が非課税
- 金融機関等に結婚・子育て資金非課税申告書の提出が必要
- 受贈者の所得制限あり(合計所得金額1,000万円以下)
- 契約終了時や贈与者死亡時の残額に課税リスクあり
- 2027年3月末までに契約を行うことで非課税適用
制度は複雑な部分も多く、使い方を誤ると本来の効果が得られないおそれもあります。ご利用を検討される際は、税理士や金融機関にご相談ください。

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