相続対策について

【相続と信託の基本】その1:信託とはなにか?

最近「信託」という言葉を耳にすることが増えてきました。

相続対策にもなることで、信託契約が注目されています。

内容がよく分からないという方にもわかりやすく、今回は「信託の基本」について3回にわけて解説します。

相続対策3原則

今まで弊社のセミナーの中で、相続対策について3つの対策をおすすめしていました。

相続税対策、納税資金対策、揉めない対策の3つです。

なぜ今投資信託なのか

今回のテーマは、相続対策3原則のうち「納税資金対策」についてです。少子高齢化社会ということで、ご高齢の方が増えている状況になっています。「凍結させない対策」が、これからの時代非常に重要になってきます。

その理由として、財産を自分自身で管理ができない状況になってしまう可能性があるためです。認知症や病気などで自分で管理ができない状態になってしまうと、財産は実質的に凍結状態になってしまいます。

元気であれば、不動産売買や株で投資をしたり、預貯金の解約や車を買ったりなど、ご自身で自由に財産の管理ができる状態にあります。しかし、例えば認知症になりご自身で財産の管理ができなくなると、財産が「凍結状態」となります。

財産が凍結状態になってしまった時は、法律上、後見人制度があります。その後、相続が起こった場合は、財産がある方については多額の相続税がかかってきてしまうことがあり、遺言書の有無で相続の手続きが変わります。財産の話し合いが決まるまでは、相続人全員で財産を共有したままの状態となります。

状況別に対策を

意識はしっかりしていても、身体が不自由になってしまうことがあります。そういった時に使えるものが財産管理委任契約です。

認知症など、自分で物事の判断ができなくなってしまう状況になった場合には、成年後見制度があります。
また、相続が万が一が起こってしまった後は、生前に遺言書を作っている方であれば、遺言に基づいて遺言執行という形で手続きを進めることができます。

また、聞き慣れないかもしれませんが、死後事務委任契約と呼ばれる契約もあります。「家族信託」が、今後、この契約に変わるような使い方ができるのではないかということで、非常に今注目をされています。

財産管理委任契約、成年後見制度、死後事務委任契約について、もう少し詳しくみていきます。

財産管理委任契約

財産管理委任契約は、元気なうちに自分自身の財産の保存や管理を委任契約を結んで依頼するという規約になります。通常、第三者の方は、親族であっても金融機関でお金をおろすことができません。

財産管理委任契約は公正証書で作って、代理権目録を公証役場で作ることができます。財産管理の委任を受けていると、銀行取引やその他の支払いなど本人確認をせずにできるようになります。

しかしながら、この制度にはデメリットもあります。委任を受けた人を監督する人がいないので、例えば、委任を受けた方が悪い人だった場合や、中にはお金を使われてしまう可能性もあります。

任意後見成年後見制度

続いて、任意後見成年後見制度は、意思判断能力が衰えてきてしまった時などに財産の保存管理処分管理を後見人に管理をしてもらう制度です。

この後見人というのは、家庭裁判所に申し立てをして、選任をします。家庭裁判所がこの後見人を決定してお願いするというかたちになります。

後見人の仕事としては、本人の財産管理が基本的な業務になります。それ以外にも身上看護など要介護認定の申請や病院の入院手続きなどを行います。後見になる方は、基本的には弁護士の先生や司法書士の先生になります。
財産管理は司法書士の先生、弁護士の先生が行い、身上看護はご家族の方が行うというようなケースが多いです。

後見になる方が専門家の場合には、月1万円から3万円程度かかります。年間で数十万近くの費用がかかってくるというようなケースもあります。

この制度は家庭裁判所にしっかり報告をする義務があるので、財産の悪用をされないという意味では流用は少ないのかなと思います。

死後事務委任契約

死後事務委任契約とは、相続が起こった後、葬儀や遺品整理の手続きを生前にお願いするという契約です。

遺言書のなかで遺言執行者を決める場合、この死後事務委任契約との違いを聞かれることがあります。遺言執行者は、その遺言に指定してある財産についての手続きは全て代わりに行うことができますが、財産以外のものについてはできません。死後事務委任契約を結ぶことで、遺言書に書いてある財産や書いていない財産の手続きを行うことができることになります。

信託とはそもそもなにか?

今回説明する「家族信託」は民放の特別法と呼ばれるもので、法律上、普通の契約よりも優先されるという形になっています。今までのものでは対応できなかった細かい部分についても、信託であれば設計することができるようになっています。

信託というのは、「信じて託する」とあるように、財産を所有している方が信頼できる人に財産を預けて、その財産の管理・処分を任せること言います。預ける人と預かる人が信託契約を結んで、そして信頼できる人に財産を預けることです。

信託契約には3種類の登場人物がいます

いよいよ本題の信託の基本の話に入ります。信託には、登場人物が3人います。委託者、受託者、そして受益者です。

財産を預ける人のことを委託者と呼びます。財産を預かる人は、受託者になります。預ける人と預かる人、委託者と受託者の関係になります。

そして最後の受益者は、信託した財産から得られる収益が帰属する実質的な所有者なのですが、少々わかりづらいので、説明をしていきます。

所有権の考え方

基本的には財産、不動産には所有権があります。所有権の中には、自分自身で使うことができる権利ー使用収益権と、管理処分することができる権利が含まれています。

信託を行う場合には、この所有権を2つに分解します。所有権を「管理処分権」と「使用収益権」に分ける必要があります。

「管理処分権」とは、売ったり買ったりする行為や権利です。「使用収益権」とは、そこから発生する不動産賃料や売却代金をもらうことができる権利です。

例えばお父さん(委託者)が不動産オーナーで、息子にアパート管理させたいということで息子と信託契約を結びます。息子さんには、「管理処分権」がうつります。お孫さんを受益者にすることによって、得られる不動産賃料や売却代金については、お孫さんに移すことができます。

「使用収益権」を移転させることができると、委託者、受託者、受益者の関係性がなっているということなんですね

お父さんが委託者で、息子さんが受託者になり、2人の間で信託契約を結びます。そうなると、まずお父さんの持っている財産の名義が受託者の息子さんに変わります。不動産であれば登記をして名義を実際に変えます。そこから上がってくる賃料はお孫さんを指定することによって受益者に移すことができます。これが信託の仕組みの一つになります。

次回は、信託と税金についてになります。

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