昨年、令和3年度の税制改正大綱が発表されました。
1、ウィズコロナ・ポストコロナの経済再生
- 産業競争力の強化に係る措置
- 株式対価M&Aを促進するための措置の創設
- 国際金融都市に向けた税制上の措置
- 固定資産税
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最初の項目で、ウィズコロナ・ポストコロナの経済再生について述べています。
(1)産業競争力の強化に係る措置(2)株式対価M&Aを促進するための措置の創設に続き、(3)国際金融都市に向けた税制上の措置が続きますが、今回は、(3)国際金融都市に向けた税制上の措置を取り上げていきます。
国際金融都市に向けた税制上の措置の概要
国際金融都市に向けた税制上の措置
我が国の国際金融センターとしての地位の確立に向けて、海外から事業者や人材、資金を呼び込む観点から、諸課題の解決を図る一環として、以下の税制上の措置を講ずる(令和3年度税制改正大綱より)
この「国際金融都市に向けた税制上の措置」は、
- 投資運用業を主業とする役員の業務連動型給与についての法人課税について
- 就労等で日本に居住する外国人にかかる相続税について
- ファンドマネージャーが組合利益の分配を受け取る場合について
の3つの税制措置について書かれています。それは、「我が国の国際金融センターとしての地位の確立に向けて、海外からの事業者や人材、資金を呼び込む観点から諸課題の解決を図る一環として」とあり、国際的な視点を取り入れての税制改正大綱になっていることがわかります。
1.投資運用業を主業とする役員の法人課税について
投資運用業を主業とする非上場の非同族会社等の役員に対する業績連動給与については投資家等のステークホルダーの監視下に置かれているという特殊性に鑑み、その算定方式や算定の根拠となる業績等を金融庁ホームページに公表すること等を要件として、損金算入を可能とする(令和3年度税制改正大綱より)
今回の改正大綱「国際金融都市に向けた税制上の措置」で、まず「投資運用業を主業とする役員の法人課税」について書かれています。
特に、投資運用業を主業とする非上場の非同族会社等の役員に対し支払われる業績連動給与について、一定の要件の下、損金算入を可能としています。ファンドの運用成果を反映した報酬を金融所得とみなし、その分について以前より低い20%を課税するとのことです。
海外機関の誘致に関して、日本の税率の違いが誘致の足かせになっていました。香港やシンガポールの所得税率が20%前後に対し、日本は所得税(45%)と、住民税(10%)と合わせて最高税率が45%と高いのです。
今回の税制改正では、一定条件を満たす運用報酬について、所得税と住民税を合わせた税率を適用せず、金融所得(税率20%)を対象とすることで、税率を実質的に軽減できるようにする狙いがあります。
一定条件を満たした資産運用業者の報酬について所得税を軽減することになり、海外の資産運用会社や高度金融人材の国内市場参入を促していきます。
投資運用業を主業とする非上場の非同族会社等の役員に対する業績連動給与については、損金算入を可能とする
2.就労等で日本に居住する外国人にかかる相続税について
高度外国人材の日本での就労等を促進する観点から、就労等のために日本に居住する外国人に係る相続税については、その居住期間にかかわらず国外に居住する外国人や日本に短期的に滞在する(令和3年度税制改正大綱より)
以前の税制では、一時的に日本に住んでいる外国人が日本で死亡した場合、相続税や贈与税の対象は「日本国内財産」だけでなく「国外財産」も課税対象になっていました。この外国人の相続税の負担が、海外の優秀な人材の確保の足かせとなっていました。
具体的には、在留資格を持つ外国人は当該被相続人や贈与者の移住期間が「相続・贈与前15年以内の国内居住期間の合計が10年以内である場合」に限って国外財産が相続税・贈与税の課税対象となっていました。
今回の税制改正では、一時的に日本に住所を持っている外国人は日本に住所を持っているとみなされないとことになりました。
さらに相続人と被相続人が長期的に日本に滞在することになっても、一定の条件を満たしていれば国内財産のみに課税されることになり、外国人が日本に住みやすくなる一助となりそうです。
今回の改正は、グローバル化を見据え、海外の優秀な外国人を受け入れるための改正と言えます。
高度外国人材の日本での就労等を促進する観点から、居住期間にかかわらず国外財産に対しては、相続税・贈与税が課税されない
3.ファンドマネージャーが組合利益の分配を受け取る場合について
ファンドマネージャーが、出資持分を有するファンド(株式譲渡等を事業内容とする組合)からその出資割合を超えて受け取る組合利益の分配(キャリード・インタレスト)について、分配割合が経済的合理性を有するなど一定の場合には、役務提供の対価として総合課税の対象となるのではなく、株式譲渡等として分離課税の対象となることの明確化等を行う。その際、ファンドマネージャーによる申告の利便性・適正性を確保するため、金融庁において所要の対応を講ずる。(令和3年度税制改正大綱より)
ファンドマネジャーが保有するファンド持ち分の値上がり益に課す所得税について、利益配分に経済合理性がある場合は、所得税法上の区分を最大55%の総合課税から一律20%の金融所得課税とすることを明確化したものといえます。
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